救うべき者の中から魂のみを呼び出し、新しい肉体に移す。
自らが作った術力安定装置の作用もあり、かくして大魔術は犠牲なく成功した。
――かに思えた。
補助があったとて、表の人間に裏の大魔術を扱うのはそもそも不可能に近い。
それを成功させた代償は少なからずあった。
現に、ロザベラの右の肩口から先。そして左足の付け根から下。
それらの部分が綺麗な切り口をのこして消えていた。
それからしばらくは平和だった。
手足を失くしたところで研究は続けられるし、幸いにして禁術を使った咎めもなかった。
事件の痕跡はこれまた記憶消去の魔術で消し、彼女はまた自宅にこもりきりになった。
ある日、ロザベラは己の肩口がうずくのに気が付いた。
その疼きは日ごとに大きくなり、そして――
人ならざるモノの腕が生えてきた。
それからは左足も同様、異形のものとなり、日を追うごとに浸食は進んでいった。
今となっては、角、羽、尻尾まで生え、大きさは人間を優に超える。
そんな化け物の姿をしても、意識は消えなかった。
数年後。
夜の村を徘徊していた「彼女」は、ふと一人の人間を目にした。
気づかれないよう、背後から近づく。
しかし、やはり異形の臭いは隠せないのであろう。
男が振り向く。しかし、その目はまだ現状を理解できていない目だ。
「彼女」は告げる。
「見られてしまったからな……悪く思うなよ」