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一つ、目の前に聳える大きな岩が動いた気がした
…否、動いている
断層運動かとも身構えたが、それにしては様子がおかしい
こんな、岩だけが独立して動くような、そんな……
それは、メトロポリスの小型プレハブアパートが3つ連なるより大きいであろう…岩
岩、そのもの
それでも、確かに動いている
岩の巨人…その言葉が脳裏に浮かんだ
くすんだ茶の結膜、燃えるような赤の虹彩。
その目は自分の姿を捉え、睥睨する。
身も竦む射抜く様な眼差し。身震いする。
本能で悟った。
ああ、自分は美しくも恐ろしい、このメトロポリスの神秘に殺されるのだと。
でも、それでいいと思った。
永遠と人の目に触れぬ地で、この美しい神秘と共に眠り続ける。
一人の研究者として、否、一人の人間としてこの安寧の地で。
なんと、名誉なことだろうか。
岩の巨人が、腕らしき二つの岩の塊をこちらへと動かした。
思わず両腕を広げる。自分を、どうとでもして欲しくて。
広い二つの岩が迫ってきて、己を閉じ込める。
暗い、暗い岩の中。
その岩は段々と温もりを帯びていく。
我が身を焼こうとするような灼熱ではない。
それはまるで、岩の揺り籠のようで……
そこで俺は意識を手放した。