最後の方は、唖然としていたと思う。
凄いなあ、と。やがて大地が揺れ、意識がブレて――――
少し時間が経って。
やがてセトになるものの外殻に、そっと手を触れてみる。凡人である自分には、旧人類でしかない自分には到底理解出来ないであろう技術。
…散漫な思考の中で、こんなことはもうこりごりだな、と思った。異形、失踪、人々の思惑が交差する。特別に駄目な自分を実感させられる。
自分が死ぬのは出来れば嫌だし、セトが本当に居なくなってしまえば、今の自分には耐えられないだろう。
依存しすぎているかな、とも感じる。セトはセトの人生を歩むべきで、俺は俺の人生を歩むべきで。
これからは少し距離を置くべきだろうか。そんなこと、出来るかどうか分からないけれど。
やがて、元の日常に戻るんだろうか?
もしかしたら記憶処理がなされるかもしれないが。もうあの幻覚について調べるのはやめようと思った。脳の錯覚だったのだ、と自分の中で納得してしまったから。
とりあえず、全てに方が付いたら…たまには、食事を奢ってやっても良いかもしれないな。
それから、また忙しくなるまでに平穏で景色の綺麗な場所を探そう。
我ながら、なんて普通の発想だ。笑みが漏れる。
それから、この箱も返さなければ。…暗示の事を謝って、許して貰えるかは分からないけれど。今くらいは、楽観的思考に浸っても許されるんじゃないか?と思う。
この事件を経て、少し卑屈で内向的になった自覚がある。
でも、自分はセトの先輩なのだ。だから暗い部分は隠して、胸を張って、頑張って生きようと思う。
今日も、明日も。